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【業務関連情報】「宮崎牛」の地産地消の取り組み

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最終更新日:2023年9月5日

広報誌「alic」2023年9月号

内閣総理大臣賞4大会連続受賞の「宮崎牛」

 「宮崎牛」は、令和4年10月に鹿児島県で開催された、和牛のオリンピックとも呼ばれる全国和牛能力共進会(注1)で、新設された脂肪の質を評価する肉牛の部で内閣総理大臣賞を受賞しました。同賞は最高位の名誉賞に当たり、4大会連続での受賞となります。
 「宮崎牛」とは、宮崎県内の種雄牛または指定された種雄牛を親にもち、宮崎県内で生まれ育った、肉質等級(注2)が5または4等級を与えられた黒毛和牛を指します。
 国内外で高い評価を受けている「宮崎牛」が、現地でどのように生産・流通しているのか、「宮崎牛」の優れた生産農家であり、JA宮崎中央の肥育牛部会会長として、地域の方々と協力し合って地元の経済の発展に尽力されている株式会社川越の代表取締役川越哲也さんにお話を伺いました。

(注1)参考:広報誌2022年12月号「第12回全国和牛能力共進会鹿児島大会が開催されました!」
(注2)(1)脂肪交雑(サシ)、(2)肉の色沢、(3)肉の締まりおよびきめ、(4)脂肪の色沢と質の4項目を5段階で評価して、4つの項目中、最も低い等級が肉質等級として判定。

「宮崎牛」の生産(株式会社川越)

株式会社川越の皆さま
株式会社川越の皆さま

清潔に保たれた牛舎
清潔に保たれた牛舎

 川越さんは、ご家族で肉用牛一貫経営(注3)をされており、宮崎市内で約240頭の牛を飼養しています。
 肉用牛の肥育では通常、牛の成長ステージに合わせて飼料を切り替えたり、牛舎を移動させたりします。しかし、川越さんは、牛へのストレスを極力減らすため、切り替えの必要がない飼料の給餌や牛舎間の移動を行わないなどの工夫によって、健康的で肉質の良い牛を育てています。
 後継者である息子の一毅さんは大学で経営学を学んだ後、県内の農業大学校で牛削蹄(さくてい)(注4)や家畜人工授精師(注5)などの資格を取得し、牛の飼養管理の大きな戦力となっています。最近は、飼料価格の高騰が続いていることから、地域の方の協力を得て自給飼料の生産に取り組んでおり、その際も重機の資格を持つ一毅さんが大活躍しています。川越さんは「息子に牛の飼養管理を任せられるお陰で肥育牛部会の取り組みにも集中できる」と感謝されていました。
 一方、新型コロナウイルス感染症の拡大やウクライナ情勢などの影響を大きく受け、ここ数年の経営は、資金繰りのためにやむを得ず繁殖雌牛を販売し、飼養頭数を減らさざるを得なかったそうです。
 一毅さんは、「当面の目標は飼養頭数を元に戻し、経営状況をコロナ前の水準に戻すこと」と意欲十分に話してくれました。

(注3)子牛生産を目的とする「繁殖経営」と、その子牛を肥育して肉用牛を出荷する「肥育経営」を一貫して行う経営形態。
(注4)牛の伸びた(ひづめ)を切り、形を整える専門技師。
(注5)牛および豚の人工授精を行うために必要な国家資格。

コロナ禍の苦境を支えた「宮崎牛」の地産地消(JA宮崎中央肥育牛部会)

A コープに飾られた宮崎牛の指定店印と内閣総理大臣賞受賞のポップ
A コープに飾られた宮崎牛の指定店印と
内閣総理大臣賞受賞のポップ

宮崎日日新聞農業技術賞の表彰状
宮崎日日新聞農業技術賞の表彰状

 川越さんが会長を務める肥育牛部会は、JA宮崎中央に所属し、肉用牛肥育生産を行う35名の生産者で構成されています。肥育牛部会では「宮崎牛」の地産地消と消費拡大の活動に注力しています。
 肥育牛部会員が生産した「宮崎牛」は、県内の食肉処理・加工メーカーである株式会社ミヤチクへ出荷・加工され、地域の販売店であるAコープの6店舗で販売されるため、生産から販売までを地域内で一貫して取り組んでいます。
 その中で、肥育牛部会は年に2回、Aコープの店舗で「宮崎牛」の試食会を開催し、消費者に対する販売促進活動を直接実施しています。
 このような取り組みの結果、昨年は200頭の「宮崎牛」がAコープで販売されました。生産者の顔が見える取り組みは消費者に安心感を与えており、地域内の需要を高める一因となっています。
 また、新型コロナウイルス感染症の拡大は、牛肉消費を落ち込ませるなど大きな影響を与えましたが、JA宮崎中央が開催した、消費者が車に乗ったまま商品を購入することができるドライブスルー方式の販売会に肥育牛部会も協力し、「宮崎牛」の消費の促進に積極的に取り組み、地域経済を支える一助となりました。
 こうした歴代の部会長をはじめ、長年の肥育牛部会の地産地消の取り組みが評価され、令和3年1月には地元の宮崎日日新聞社から農業技術賞を受賞しました。

「牛マルキン」による支援

「牛マルキン」による支援

 厳しい経済情勢下でも地域の方と協力しながらコスト削減などに取り組んできた川越さんと肥育牛部会員の方たちでしたが、それでもなお和牛の生産には多くのリスクが伴います。
 一般的に和牛は、子牛を導入してから出荷するまで、約2年近くもの期間がかかります。この間、飼料価格や枝肉の販売価格などはその時の相場状況によって変化するため、結果として収益が大幅に変動する可能性があります。
 特に近年は、コロナ禍における和牛肉消費の減退に伴う販売価格の低下、ウクライナ情勢下の輸入原料価格高騰などによる飼料価格の上昇により、生産者は厳しい経営環境に置かれています。
 こうしたリスクに備えるため、alicでは、肉用牛肥育経営安定交付金制度(通称「牛マルキン」)を実施しています。牛マルキンとは、経営の収益がマイナスとなった場合に、交付金が交付される制度です。
 株式会社川越も牛マルキンに加入しており、経営環境が厳しい時には、交付金が特に経営継続の助けになっているとおっしゃっていました。
 alicは、肉用牛の肥育経営を支えるべく、今後とも牛マルキンの適正実施に努めてまいります。
(畜産経営対策部)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196